Column

会員コラム

MOT-IP会員コラム

「会員コラム欄」開設の狙い 

(文責)㈳技術知財経営支援センター
広報担当理事 福井 寛 

 MOT-IPには技術士、弁理士、中小企業診断士、税理士などの士業専門家が集まっていますが、各メンバーの得意分野や考え方などを紹介するのがこの会員コラム欄です。
 この会員コラム欄にはMOT-IPのメンバーが常日頃考えていることなどが自由に書いてありますので、この欄を読めば各メンバーの技術や知財に関する様々な考え方が分かると思います。 
「各メンバーの異なった特技・感性が切磋琢磨して多面的な対策を考えだすこと」、これがバラエティに富んだ人材のいるMOT-IPの強みといえるでしょう。

 

知的財産コンサルタントあれこれ 4
〜 知財意識の低い技術者 〜

平成30年12月6日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 
 企業の知的財産に関わっていくとき「知財意識の低い技術者もいる」ということを前提に企業の知的財産を運営していく必要があります。
 私の経験した事例では、若い技術者から「商品を販売することになったのですが、付属部品を競合のデッドコピーとしました。競合特許に抵触しないでしょうか?」という問い合わせがありました。これには、いくつかの問題点があるのですが、その話は後に譲るとして、この問いかけに対して調査しました。
 私は「競合他社からは、その付属品に関する特許、実用新案、意匠などは出願されていないようです。」と回答しました。
 若い技術者は「それはよかった、ではこのまま販売します。」ということだったので、私は「ところで、製品本体については他社の特許などを調査しましたか?」と問いかけました。
 そのとき若い技術者は「大丈夫です!製品本体は自分が考えて設計しましたから!」・・・私はひっくり返りそうになりました。
 自分が考えたものであっても、他社の知的財産を侵害する可能性は充分あります。というより、デッドコピーするより用心する必要があるかもしれません。デッドコピーは、他社の権利範囲に入る可能性もありますが、他社の権利が終了している可能性もあり、公知となった先行技術とみなすことができます。ところが、自社で開発した製品は技術者が「新しい」または「独自」と考えるほど、他社でも一歩先に知的財産権の取得に動いている可能性があるからです。
 さて「その話は後に譲る」とした問題点のひとつは、発売間近になって知的財産の相談となったことです。発売間近で他社の権利を侵害しているということが判明した場合はどうなるのでしょうか?それまでの開発費、開発に関わった人件費、さらには準備された発売前の製品、カタログ、協力会社へのアナウンスなどがすべて無駄になってしまう危険があり、場合によっては会社の信用問題になるかもしれません。開発が始まった時点、遅くとも開発が終了し生産に入る前には、知的財産権として問題がないか確認をしないととんでもない手戻りになってしまいます。
 製品を企画して開発を開始した時には、まず他社特許を調査して障害となる生きた特許がないかを確認することが大切です。そして、障害となりそうな特許がある場合は、その特許の権利範囲からはずれるように開発を再検討する、実施権のライセンスを検討する、その特許の無効化を検討する、開発を中止するなどの対応策をとることが大切です。
 自社の技術を過信せず、他社の知的財産に目を配ることが大切です。定常的に他社の技術に目を配る方法については次回のコラムで紹介いたします。

 

知的財産コンサルタントあれこれ 3
〜 日本語で外国特許調査? 〜

平成30年9月9日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 
 特許を手軽に調査したいときに無料の特許調査データベースのJ-Platpat※を利用している方も多いと思います。私もよく使っていますが、一覧表示の内容が貧弱、特許分類とキーワードの検索では自由度が少ない、とかゆいところに手が届かないため、効率的に調査をしたいときには有料のデータベースを使っています。
 しかし、J-PlatPatには「え~っ、こんなこともできるの!」という特徴もあり、そのひとつを紹介させていただきます。
J-PlatPatの特許・実用新案検索にて外国特許文献を日本語で検索できる機能です。もちろん、全ての外国文献に対応しているわけではないので「あったらめっけもん」という考えで使っています。
 では、どのように利用するかというと、
 1.J-PlatPatのページから「トップページ>特許・実用新案>特許・実用新案検索」へと進みます。2.特許・実用新案検索ページの「種別」の「外国」の「主要5庁」にチェックします。このとき、「WIPO(WO)」のチェックははずします。理由は日本語文献が多量に検索されてしまうからです。3.「国内」と「非特許」のチェックもはずします。4.「テキスト検索対象」は「和文」をチェック。5.「検索キーワード」に自分の調べたいキーワードを入れて「検索」ボタンをクリック。6.表示された「外国文献ヒット件数」の「一覧表示」をクリック。7.一覧で「代表文献番号」をクリックして文献内容を表示します。8.ここで「和文抄録」をクリックすると和文による抄録が表示されます。9.この画面で「次の文献」をクリックして一覧表示された文献の抄録を順次確認できます。10.原文を確認したいときは「原文イメージ表示」や「原文PDF表示」のタブで原文や図を確認できます。
 私は無効資料を調査していたのですが、どうもいい検索ができなかったので「あったらめっけもん」と思ってアメリカとヨーロッパを和文検索しました。機械翻訳ではなく、人手作業による和文抄録は読みやすく内容を理解しやすいものです。その中で、近いなと思ったら特許明細書のPdfを見て該当しそうか調査しました。残念ながら、該当する文献は見つかりませんでしたが、意外と使いやすいことや、期待していた文献に近いものもありました。
 また、原文の特許を読む前に理解の助けにしたいときなど「トップページ>特許・実用新案>外国公報DB」で直接文献番号を入力して和文抄録を読んでいます。
 みなさんも一度は試してみてはいかがですか。
※注(J-PlatPat:特許情報プラットフォーム、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する特許、実用新案、意匠、商標を無料で検索できるデータベース。)

 

知的財産コンサルタントあれこれ 2
〜 特許調査をする 〜

平成30年7月20日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 
 企業の知的財産コンサルタントをしていて、うれしい、と思うことがあります。それは、発明のアイデアをまとめた「出願依頼書」の先行技術調査の欄に「特許調査済み」とあるときです。自分の発明のアイデアだけでなく、先行技術を調査したうえでアイデアをまとめる、という視野を発明者が持っていることは大変良いことです。
 ところが残念なことにこの調査がたいへん雑なのです。Google検索に慣れてしまっている方が多いこのごろですが、キーワード検索では何らかの答えが出ます。Google検索であればお勧めの検索結果が上位に出ますし、特許検索ですと最新順などで一覧が出てきます。調査した側としては、なんか調べた気になってしまいますよね。ただ、そのキーワードで良いの?と思うことがほとんどです。
 では、どういう検索が良いでしょうか?特許検索は奥を極めればいくらでも解説できるものですが、技術者が出願前に先行技術調査をするのであれば、キーワードと特許分類の調査が良いと思います。以下に、インターネットのサイトを利用した調査方法を説明いたします。

 特許調査では、無料の特許調査データベースの特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)<https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage>の「特許・実用新案検索」を使うのがお手軽でしょう。検索項目のマスから「全文」あるいは「請求の範囲」を選び、検索キーワードのマスにキーワードを入れて検索します。この時、注意いただきたいことは同義語のキーワードを複数使うことです。一つのマスに空欄を挟んでキーワードを入れていくとorとなります。マスとマスはandになりますので、これで複数のキーワードでの掛算検索ができます。
 キーワードを増やす方法としては、weblio類語辞書<https://thesaurus.weblio.jp/category/wrugj>を使って他のキーワードを見つけても良いでしょう。キーワードで注意したいのは、社内だけで使っているような専門用語、技術用語などは他者の特許では別なキーワードになっている可能性があります。ピンポイントのキーワードにならないように注意しましょう。このキーワード検索で、一覧の特許数は多いけどタイトルで無関係とわかる特許が多いようであれば、特許分類を使ってみてください。特許分類にはIPC、FI、Fタームなどがありますが、初めて特許分類を使うのであればIPCが無難でしょう。特許分類とキーワードを掛け合わせると、調査結果の件数を絞ることができます。IPCはキーワード検索で調べた特許の1ページ目に記載してあります。このIPCの意味についてはJ-PlatPatのパテントマップガイダンスで調べることができます。具体的な手順については、ネットや本で紹介されているのでご一読ください。

 特許調査は複数の同義語を使ってキーワード検索、関係がない特許が多いようでしたらIPCなどの特許分類とキーワードを使って検索してみてください。特許検索にはいろいろと試行錯誤していく楽しみもありますよ。

 

知的財産コンサルタントあれこれ 1
〜技術者からみた知的財産〜

平成30年6月26日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 私は大手メーカーで新規事業の開発やマーケティング、生産、販売などに関わってまいりました。その間に技術士(電気・電子)の資格を取ることができました。しかし、技術の違ういくつかの新規事業に携わったために、自分のコアとなる技術の足場をしっかり構築できませんでした。そんな会社員生活の終盤、退職の5年前より知的財産室の所属となり、発明を生む側から発明を出願する側に立場が変わりました。その時、これこそ私のコアとする仕事にできる、と直感いたしました。その直感があっていたかどうかは置いておき、退職して3年、この知的財産の分野で仕事を続けられているのは、たいへん幸せなことだと思っています。

 特許の仕事をしていると、私のように技術者から知的財産の仕事に関わるようになった方と多く出会います。私の在職した大手メーカーの知的財産室も9割が元技術者の方であり、その大半の方が研究所などの研究開発職を経験した方たちでした。
 さて、そんな技術者上がりの私が知的財産室に配属されて戸惑ったことは、知的財産にこれから関わっていく方にも参考になる経験と思いますので、そのお話しをさせていただきます。
 
 知的財産室に配属されて特許の出願の担当となって戸惑ったことは「上位概念化」という考え方です。技術者時代の私は特許というものをずいぶんと漠然ととらえていました。そのため、自分の発明をそのままに特許の請求項とすればよい、と考えていました。しかし、知的財産室の方々、また弁理士や特許技術者の方は、広い権利範囲とするため、その発明をいかに上位概念化するかということをまずお話しされます。発明を生む技術者と、その技術者の発明を出願する方の発想のギャップに最初はたいへん驚きました。
 
 上位概念化というのは簡単に言えば一般化です。「鉄材」を「金属材」と言えば、より広く材料を包含するので上位概念化できたと言えます。しかし、ただやみくもに上位概念化すればよいかというと、上位概念化すると先行技術が含まれる概念まで入ってきてしまいます。上位概念に先行技術が含まれる場合は、特許は拒絶され権利化できません。そこで、どこまで上位概念化するか、どういう上位概念化するか(例えば、鉄材を金属材と上位概念化するか、板材と上位概念化するか)など、その点を知財担当者と発明者は議論して詰めていきます。発明者の自分の発明だけに目が行っていた技術者時代ではあまり思考することの無かった考え方でした。
 
 私は、技術者時代は特許の権利範囲を漠然と捉えていましたし、特許を成立(権利化)させるための取り組みに対しては考えも及びませんでした。そんな私が技術者の発明を拾い出し特許にしていった経験を、今後、記事にまとめさせていただき、知的財産に興味のある技術者の方の参考になれば幸いです。

 

企業における研究開発と知財の利用

平成29年10月13日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
森田 敬愛

 私は企業勤務時代、燃料電池用電極触媒の研究開発に長らく関わってきましたが、これとは全く異分野の材料開発に従事したことがあります。「全く異分野」と書きましたが、開発の準備段階で関連技術の文献調査を行った時に、電極触媒ひいては触媒技術全般に関わる事項が多いことに気づき、分野は違えども技術を突き詰めていくといろいろなところでつながっているものだなと、基本の大切さを再認識しました。
 
 その後、材料開発がある程度進んだところで、本当に意図したような材料になっているのかを確認するために、これまでとは違う分析手法が必要となってきました。お金と時間をかければ可能な方法はあったのですが、簡便にできてかつ確実性が高い分析ができないかと、いろいろと文献を探しました。今の時代はインターネットを通じて様々な調査ツールが提供されており、文献調査は格段にやりやすくなったのはITの進化の賜物です。しかし、対象としている技術をきちんと理解していないと、目的とする文献にはなかなかたどり着けないのではないでしょうか。
 
 果たして、自分が探していた情報に関連した文献が見つかり、分析も社内の装置で十分できそうだということで、実際に試してみました。試行錯誤がありましたが、自分の仮説を証明できるデータが得られ、開発業務に一区切りがつきました。先達が残してくれた莫大な知財(ここでは特許に限らず全ての技術文献を含む)の中から、自分の目的とした情報を的確に探し出し、研究開発における実務(実験)にうまく役立てることができたと思っています。
 
 3年ほど前に技術士事務所を開業して以来、様々な企業とお付き合いをする中で、中小企業では知財を利用した技術開発が上手く出来ていない状況が多いように感じています。人員も時間もかけられないという事情の他に、どのように技術調査をしたらよいのか分からないという場合もあるのではないでしょうか。そのような時には、少し費用をかけてでも外部に依頼した方が効率よく仕事が進むのであれば、検討する価値があると思います。
 
 いざ社外に技術相談や調査を依頼しようとなったときに、誰に依頼するかで悩むことになるかもしれません。想定している技術にピンポイントで経験のある人を探すのはなかなか困難です。そのような時は、様々な分野に精通した技術のプロがいるコンサルティング機関等に相談することをお勧めします。ピンポイントで経験のある人がいなくとも、その周辺分野に精通した技術のプロであれば勘所がすぐにわかり、技術調査等もすぐに対応できるはずです。技術のプロである「技術士」や知財(特許)のプロである「弁理士」がそろっている機関を探すのが一つの方法かと思います。
 
 いま何か技術課題を抱えている方がこの文章を目にされたのなら、多才なプロがいるMOT-IPに是非ご連絡下さい。解決の糸口が見つかることをお約束します。

 

「アイデアのつくり方 」考

平成29年01月29日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 特許を取るには、アイデアが勝負であるといわれる。しかし、簡単にアイデアが生まれれば苦労はしない。ところが、世の中に「アイデアのつくり方」という冊子が販売されている。しかも価格は800円と安い。本当に「アイデアのつくり方」をこんな安い価格で提供して大丈夫か、眉唾の内容ではないかとも思いながらも購入した。

 まずはじめに、上記小生の疑問に答える文面が書いてあった。すなわち、「アイデアの創生の公式は、説明は簡単至極だが、これを信用する人はほとんどいなく、また実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知能労働が必要なので、この公式を手に入れたといって、誰もがこれを使いこなすことはない」ということであった。だからこの公式を吹聴しても困ることにはならないそうだ。それほどのものなのか?

 前置きはこれくらいにして内容の抜粋を以下に紹介する。
1)アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない。
2)要素の新しい組み合わせのためには、事物の関連性を見つけ出すことが必須である。
3)事物(事実)の間の関連性を探ろうとする「心の習性」がアイデア作成に最も重要であるが、それは、練磨することが可能である。
4)「心の習性」とは、以下の5段階を一定の順序で完遂させてゆくことである。
5)第一の段階は、資料を収集すること。当面の課題に関する特殊情報と一般的知識の絶え間ない集積。これは当面の仕事でもあり、一生の仕事でもある。それ故「言うは易く、行うは難し」である。
6)第二の段階は、収集した資料を徹底して咀嚼し、情報間の関係性について考え抜く。ドラッカーの言う「Think through」と通じるところがある。
7)第三の段階は、問題を一旦放棄し、忘れ、無意識の心にゆだねる(孵化させる)。無意識の世界では、休むことなくいろいろな考えが巡っている。
8)第四の段階は、アイデアが突然訪れる。(例えば入浴中に)。
9)第五の段階は、生まれたアイデアを現実の条件に適合するよう手を加え、成長させる。 赤子と同じで、手を掛けなければ、大きく育たない。アイデアが生まれて安心してはだめである。

 お解りのように、アイデアは真剣に頭を絞らないと出てこないものであり、又この絞り方の原理、方法を間違わずに行うことが重要であるということであった。

 信じて、徹底的に実行あるのみ! そうすれば、アイデアはあなたにひらめく!

参考文献;アイデアのつくり方 、ジェームス・W・ヤング (TBSブルタニカ)

 

秋風に思うこと

平成27年10月28日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
荒明 正春

 今年も特に休む日も無いままに気がつけば秋を迎えた。充実した毎日と云えば聞こえも良いがそれだけ色々とやらねばならないことがあった。そんな訳で相変わらず多くの文章を読む毎日。それは論理的な内容のものが殆どで科学、技術、訴訟、事故、事件など仕事の関係上 理系と文系の両方が要求される。

 時には、羽田から長崎へ歴史、文化を求めて短い旅に、真夏には涼しさを求めて湯の湖(日光)にドライブがてら出掛けて頭が懲り固まらないようにしている。質実剛健を忘れず研鑽を積むように努力しているつもりだが中々これが継続することは大変だと感じながらも時間は構わず過ぎて行く。何か気障な感じになったので最近特に感じている事を思いつくままに披露させて頂く。それは、物事を考えるためには知識も重要だが、物事を解決するためには知恵がものを云うと云う実感だ。

 複雑化した現代は、その多くが多すぎる情報の海の中から一つの真実を見分けなければ真の解決が図れない程、余りに雑音が多すぎることで、それは特許にしても事故にしても見極める心眼が要求されていると云う事実。その為には技術にしろ、何にしろ経験が必要で所謂、場数をどれだけ踏んできたかと云うことで、浅学非才の私は置いて、センターの皆さんはそれぞれの分野で豊富な経験と問題解決に立ち向かって来た人達。

 難しいのは、技術と知財とそして経営をどうシームレスに繋げて支援して行くかまた出来るかだと云うことで、これは正直中々至難の業あるいは技だと実感している毎日だ。格好を付けずに素直に直面する問題解決のために経験に基づいきそこから生まれる知恵と知識と判断力とをフルに冷静、沈着に発揮してクライエントの期待に応えられるような集団になれればとの思いがある。

 コンサルとは何かと云うことを業務を熟しながら常に自問自答しながら、気がついたことはそれを反映している日々。

 
 

『ブルーベリー作戦成功す』と先行技術調査

平成26年11月04日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
沢木 至

 『ブルーベリー作戦成功す』という小説をご存知だろうか? 最近発売になった「日本初の本格特許ミステリー小説」である。著者の池上敏也氏は、薬学部を卒業し、製薬企業に勤務した後、弁理士資格を取得し、20年間の勤務後に退職し、その後特許事務所を開設して20年間運営したという経歴のバリバリの理系特許専門家だ。

 この小説では、日本とドイツの製薬会社間での特許侵害紛争を発端に、特許を無効化する先行技術(プライヤー・アート)を入手するための『ブルーベリー作戦』を軸に話が進む。さらには企業秘密の売買といった動きも絡み、ミステリーの要素がふんだんに盛り込まれたエンターテインメントとなっている。知財のプロが書いた、特許紛争と営業秘密漏洩という知財の重要トピックを扱ったミステリーなので、是非とも読んでみて欲しい。

 さて、小説では先行技術をちょっと変わった方法で入手することになる(ここはミステリーの重要部分なので、詳細は実際に読んでみて欲しい)。でも現実にはそんな話はなかなかなくて、もっと地道で真っ当な方法で先行技術を見つけ出すことになるだろう。

 何度か特許無効化のための先行技術調査を行ったことがあるが、特許査定を勝ち取ったものを後から無効にできるような先行技術を、そうそう簡単に見つけることはできない。特に、特許文献については、データベースが充実しており、ある程度のスキルがあれば誰でもそれなりの結果が得られるため、審査の過程で見落としていた重要な証拠が後から見つかる可能性は低い(外国特許の中から見つかる可能性もあるが)。

 一方、非特許文献は、いくつかのデータベースがあるものの、特許情報のような分類はないし、テキスト検索も限られているため、逆に工夫の余地が大きく、調査する人の力量差が出やすい。そのため、特許庁や相手側が見つけていなかった重要な文献を見つけることができる可能性がある領域と言える。

 そんな調査を可能とするには、スキルだけでなく、対象技術を捉える視点や、突破口を見つけるセンスなども重要となってくる。また、最新のデジタルな調査手法にも対応できる一方で、時には昔ながらのアナログな調査手段(図書館で雑誌を片っ端からめくったり)も駆使するような、引き出しの多さも有効となる。知財経験だけでなく、技術者としての経験も含めて、多様で多彩な知見が武器となる奥の深い分野だと思う。

 我々には『ブルーベリー作戦』のように派手なプロジェクトは無理だけど、多様で多彩(多才)な人材が揃っている。地道で着実だけど他とは違う意外性のある調査をお望みの方は、是非一度ご相談いただけたら、きっとお役に立てると思う。

 

守秘義務について

平成26年10月16日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
加納 照彦
 私が経験したことをお知らせ致します。
 ある日、私宛に全く知らないアメリカの企業からの英語のメールが届きました。その内容は次の通りのものでした。

  「我々は、全世界で技術コンサルタントの仕事をしている。貴殿も技術士として働いておられると理解しているが、今回貴殿に一つの仕事をお願いしたい。ついては、貴殿がプロフェッシヨナルエンジニアとしての自覚がどの程度のものであるかを確認したい。資料を送るので、回答を送って欲しい。」と言うことでした。

 “OK”の返事を送った所、資料が送られて来ました。様々なケースの守秘義務に関する事例が表示され、“YES“ or “NO”の答えを要求していました。

 返事を出したら、「貴方は、当社の守秘義務に関する試験に合格しました。貴方をわが社のコンサルタントとして採用します。ついては、添付してある質問事項に対して返事を用意して置いて下さい。それが用意されたら知らせて頂きたい。その後貴殿の所へ電話が行くので各質問に対して20分程度の返事をして下さい。電話での質問に対する回答が終わったら確認後、1件につき○○円の報酬を送ります。」というメールが送られて来ました。

 暫くして質問事項が送られて来ました。その内容を見て驚きました。それらは、私が以前勤めていた会社の研究所にいた時に特許を取り、得意先へ提供した技術の特許請求項に入れてなかった数項の重要なノウハウの中に含まれていた事項 でした。

 私は返事を送りませんでした。催促のメールが送られて来ました。私は無視しました。それから数か月後、東洋の或る国の大手メーカーの名前で、次の様なメッセージがメールで送られて来ました。

 「お前は我々の要求を無視した。今に見て居ろ、我々はこの製品の世界一のメーカーになってやる。」それは、アメリカの企業ではありませんでした。東洋に所在する大企業でした。最後に送られて来たメールを含め、信じられない事件でした。尤もこの特許は既に期限切れとなっていたので、回答をしたとしても法的には問題は無かったかも知れません。然し、私が守秘義務を忘れて唯唯諾諾とノウハウを送っていたら、今頃日本のメーカーはどうなっていたことでしょうか?

 このような形で「日本の知財」を持って行こうとする外国企業もある。という1例をご紹介致しました。
 

特許電子図書館の活用事例からの一考察

平成26年04月06日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 馬緤 宏 

 特許電子図書館(IPDL)は、特許等の出願前には必ずと言っていい程、新規性確認のために、類似の前例有無の調査(先行技術調査)に利用されている。ここには膨大な過去のデータが蓄積されており、出願前の調査だけに用いるのは勿体ないとかねがね思っていたが、最近、これを知的な遊びに用いている方に出会った。

 それは、IPDLの中で公開テキスト検索を用いてあるキーワードをINPUTし、出てきた特許、実用新案の文面から関心のある技術を選び、再度検索して、次々と繰り返し拡大して関連情報を読み取り、全く予想してなかった情報を得て驚きと満足を得るものであった。特許出願前の新規性調査のような仕事目的ではなく、知的好奇心を満足させる一種の遊び目的である点が特徴である。多忙な人向きではないが、技術分野のすそ野拡大には最適の方法と思われる。IPDLでは、ある技術のキーワードを入れると、過去の特許情報のデータベースの中から該当する文献を一瞬のうちに選出可能だから、この話を聞いた時には、単なる遊びに使うのは勿体ないと感じた。

 最近、筆者がIPDLを活用した事例は次の2例である。一つは、最近、初心者・中級者向けの機械設計の本を出版したが、この中で、設計のアイデア発掘の方法として、失敗事例分析と過去の先人の発明事例を集め、ここからヒントを得て有効な案を捻出する方法を解説した。もう一つは、最近の有名な展示会で、ある会社が特許番号を表示して新技術を説明しているのを聞いた。帰宅後、念のためにIPDLで調査して詳細まで理解できた。更に、その会社の特許状況を調査したら、新たに7件の特許が発見された。翌日、他にも用件があったので、その2日目の展示会に行き、昨日の会社の担当者に調査結果を話したら、驚いていると同時に、当方への信頼感が増した様子であり、その後の活動に役立った。

 ここではIPDLの活用方法の例を述べたが、知財のツールは他にも多く存在する。それらを少し違った見方で活用して、何かの創作活動、経営、技術などの活動や支援の範囲を拡大したいと願うと当時に、特殊な技術を持つ仲間が増えることを期待したい。

 

私の知財に関する旬の時期、そして今は

平成26年01月22日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

   60歳で定年退職する時に、知財部門から入社以来関与した特許の一覧表のリストを贈られた。筆頭執筆したものが約35件、連名執筆したものが約100件であった。一覧表をみれば、研究開発に没頭していた時期に筆頭執筆が多く、主任技師になってからは連名として関与したものが多くなっているのは一目瞭然である。開発担当の時代は、特許のネタはいくらでもあったが、特許執筆のために研究開発の時間が取られるのを嫌い、最低限のノルマ件数しか出願しないことが多かった。しかしグループの特許出願件数が未達とわかる期末には、上長から頼まれ、一週間程度で書き上げることもあった。まさにこの時が私にとって特許創生の旬の時期で、兎に角自分のアイデアをこれでもかと、なんでも請求項に書き込んだものであった。

 しかし、グループリーダとなると、本当に強いクレームは何か?競合会社が困るクレームは何処か?など、部下の請求項の内容や書き方の方に関心が移り、担当者のアイデアを褒めながらも、弱点や不足内容を補強したり、修正させたりすることが多くなった。そして本当に会社に役立つ、強い特許の出願を執筆しているのは筆頭発明者でなく自分であると自讃?したりした。まさにこの時期は、特許内容の強化の旬の時期であったように思う。

 そして、今、技術士として独立した立場で、上記経験を活かした活動をするとして、何を旬とする時期になるであろうかと自問する。

 直接の担当者でない立場になったのであるから、知財を客観的に評価できる旬の時期か、知財の適切な商品化を支援する旬の時期か、そしてそのための武器を錆びさせることなく磨き続けて、グローバルな競争の時代に生き残ろうとしている顧客と共栄して行く時期にするか? そのため日々悪戦苦闘している時期である。
 

知財とセレンディピティ

平成25年12月17日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
広報担当理事 福井 寛

 「知財」とかけて何と解く、「泥船の上の狸」と解く・・・・その心は?!


 「価値、価値と言い始めると危ない!」カチカチ山ではカチカチという音を聞いて狸の没落が始まった。

 知財の価値とは何だろう。知財の価値というのは難しい。はっきりと価値が分かるものは「この知財の価値は・・・」などと説明しなくても良いものが多い。そもそも知財の価値は単独では決まらない。ビジネスモデルに組み込まれて初めて価値が出る。その知財に適したビジネスモデルを持っていない組織ではその知財の価値はほとんど無いに等しい。自分でビジネスモデルを作るか、それに合うビジネスモデルを持っているところに使ってもらうかということになる。

 話は変わるが、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つけることがある。この能力・才能をセレンディピティと呼ぶが、何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指す。

 世界で有名な発明・発見はこのセレンディピティが関係している。ペニシリン、エックス線写真、テフロン、電子レンジなどは偶然の発見を実用化したものである。セレンディピティの段階としては、①偶然その現象に出くわす、②常識からはずれたその兆侯に興味を示す、③常識を疑いそこに新たな仮説を立てる、④その兆侯を徹底的に分析し新たな仮説を裏付ける、である。自然は人間より偉大である。しっかりと自然の観察を行えば素晴らしい法則に遭遇するので、それを基本に仮説を作り応用することによって新しい価値が生まれるということであろう。

 私は長く化粧品業界にいたが、化粧品は雑学の集合体で、様々な領域の情報を組み合わせて新しい価値を生み出している。一般的には「選択と集中」がもてはやされているが、私の場合は「拡散と結合」で多様性を目指している。技術や特許を違う領域のビジネスモデルに組み込んで新しい価値を創り出すためのお役に立てればと思う。

 

あれから10年

平成25年10月31日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
副代表理事 黒田雄一

 2012年末の安倍政権の誕生以来、日本全体がデフレ脱却に向けて(進み方の早い遅いはあっても)ベクトルを揃えてきたように感じられる。その要は成長戦略であり、これを支える大きな柱の一つが知財政策であろう。ところが2003年に「知的財産基本法」、「知的財産戦略大綱」が相次いで制定され、「知財立国」へ華々しく踏み出して10年、この間に行政や司法の制度や仕組みの刷新が進んだものの、肝心の国際競争力の面では、多くの産業分野で右肩下がり状況が続いてきた。


 この当時のいわゆる「知財ブーム」に関連して、東大名誉教授の甘利俊一先生が2004年の電子情報通信学会の会長就任挨拶において警鐘を鳴らしたことが思い出される。その趣旨は、科学技術から生まれたはずの知的所有権が科学や技術でなく法律の枠で議論され、知的好奇心がその源泉であるはずの科学と技術がもっぱら法律的係争を通じた財テクの手段として扱われがちであることへの憂慮であったと記憶する。また、そのような争いが学術の創造性とは関係なく法的技術に長けた‘ずる賢いもの’の勝利となりがちな点も指摘されていた。

 「ずる賢いもの」の典型は、米国辺りで話題になり始めていたパテントトロールであろう。しかしそこまで行かずとも、知財を科学技術という母胎から引きはがして(あるいは目をふさいで)、法律論、用語論、権利化テクニック論だけの世界に取り込もうとする「知財専門家」もまた少なくないように感じるのは、筆者だけだろうか。

 新しい技術的着想を、権利化テクニックを駆使して破綻なく説明すれば、特許はとれる。しかしその着想を形にし、さらに事業化するには、科学的知識、ものづくり現場の技術、そして販売、経営面の知恵(それに資金)を注ぎ込まねばならない。表面的「知財ブーム」とは一線を画するわが「技術知財経営支援センター」の活動が、真の「知財立国」に些かなりとも貢献して行けることを、切に願ってやまない。

 

私の体験的MOTコンサル論(その1)

平成25年9月30日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
副代表理事 佐々木久美(ササキ ヒサミ)
 
 2008年春、私は化学技術者として39年間勤務した大手日用品メーカーを定年退職した。約30年間の研究職時代には20品種近い新製品(内容物)を開発すると共に多数の特許出願を行った。その後、子会社の事業企画と開発営業を経験した後、最後は本社の知財部に呼び戻されて、後輩技術者への教育を兼ねた出願支援を担当した。決して順調な会社人生ではなかったものの、あらためて振り返ると、これらの実務経験がMOTコンサルタントとしての佐々木技術士を形成している土台になっており、「今の私はこれまでに出会った人々と出来事の全ての賜物である」を痛感している。特に、研究職の後、突然エンジニアリング系の子会社へ左遷された当時は失望感が大きかったものの、事業企画、マーケティング、開発営業という研究職では体験できない極めて貴重な実務を通じて勉強させて戴いた。

 独立後も若干の紆余曲折はあったものの、開発系の技術コンサルタントとして常にクライアント企業を抱えると共に、中小機構「農工大・多摩小金井ベンチャーポート」という中小ベンチャー企業の支援機関において非常勤インキュベーション・マネージャー(以下、IMと略記)として中小企業支援の現場で、MOTコンサルを勉強させて戴いている。

 これに、昨春からはMOT-IPとしての仕事と補助金関連業務も入ってきているのが現状であり、コンサルとして充実しつつある。IMとして企業支援を日常で体験できる貴重な立場にいることもあり、MOT-IPの今後の方向性を見据えつつ、私は「今後のMOTコンサルティングのあるべき姿」を常に模索している。例えば、士業コンサルタントの多くは役割分担型で企業業務の一部分を受け持つスペシャリストスタイルが主流であろう。しかし、多くの中小企業からMOTコンサルティングのレパートリーとして、単なる技術・知財面での支援のみならず、マーケティング戦略を踏まえた技術開発テーマからターゲット顧客の設定と販路開拓に亘る総合的MOTコンサルが求められてきていることを痛感する。しかし、周囲の士業者を見渡しても、技術士をはじめ現在これをこなせるMOTコンサルタントは希少であろう。

 最近拝聴したセミナー「ネジザウルスの開発から得られた秘訣」の中で、(株)エンジニア・高崎社長がヒット商品を生み出す4つの秘訣の中で、特にマーケティングとデザインの重要性を説かれていましたが、私も全く同感である。つい取りとめもなく書き連ねてしまいましたが、本テーマは永遠の課題です。今後も掲載場所を変えて議論を継続して参る所存です。ついては諸兄からもご意見を頂戴致したく。
 

私の体験的MOTコンサル論(その1)

平成25年8月31日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
代表理事 秋葉恵一郎
   最近、MOT-IPのホームページとは別に自分の事務所のホームページを立ち上げた。アドレスは、http://www.mot-ip.com/akiba/01home.htmlである。「プロフィール欄」を見ると、改めて知財関係の業務経歴が長いと感じるが、これには理由がある。

 入社当初は農薬事業部研究部に籍を置いていたが、上司が研究には向かないと判断したようで、私は特許部、農薬事業部開発部、製造部と技術系として広いキャリアを積むように転勤した。転勤すると社内での知己が増え、電話一本で用事を頼める間柄ができ、仕事をスムーズに進められるようになる。私はこの先もこの流れに乗って農薬事業部海外開発部、本社技術部等に籍を置いて会社生活を送るのだと思っていた。

 ところが、仕事にも原因と結果が結び付いているようで、仕事を司る神様は、所々に『ターニングポイント』を置いている。私の場合は、特許部で携わった農業用ピレスロイドの米国特許出願を担当したことが“原因”になり、取得した特許権を行使して独占実施権者であるShell USAと共同で米国特許訴訟を提起することになった。これが“結果”である。日本の会社では初めて原告として米国で特許訴訟をすることになった。米国で我社の大型農薬の独占を守り、特許権の無効を防ぐためだ。私は知財部で6年半“専従”でこのスーパーヘビー級の特許訴訟を闘った。結果は、自社有利の和解で終了することができた。

 それから私の会社人生は変わり、知財に深く係わることになった。訴訟が起こる前は「縁の下の部門」だった特許部が、新聞紙上では“特許部から知財部”へと高級なイメージの名前に変わり、かつ記事として取り上げられることが増えた。会社内では職務発明への出願補償・登録補償・実施補償規定を作ることになり、自社知財組織を強化する役目を担い、日本の特許訴訟にも携わり、海外調査も数多く行った。それらの全てが今の自分を作っている。

 会社での業務経験にJST(科学技術振興機構)、IPCC((財)工業所有権協力センター)、志賀国際特許事務所調査部並びに(国)東京工業大学で経験したキャリアを加えてMOT-IPの業務に励んで行きたいと思っている。

 私は“仕事の種子をまきます”、そしてこれからMOT-IPの趣旨に賛同して参加して下さる若い会員に“大きく育った仕事を刈り取ってもらいたい”と思っています。
 

HOME | コラム