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会員コラム

MOT-IP会員コラム

「会員コラム欄」開設の狙い 

(文責)㈳技術知財経営支援センター
広報担当理事 福井 寛 

 MOT-IPには技術士、弁理士、中小企業診断士、税理士などの士業専門家が集まっていますが、各メンバーの得意分野や考え方などを紹介するのがこの会員コラム欄です。
 この会員コラム欄にはMOT-IPのメンバーが常日頃考えていることなどが自由に書いてありますので、この欄を読めば各メンバーの技術や知財に関する様々な考え方が分かると思います。 
「各メンバーの異なった特技・感性が切磋琢磨して多面的な対策を考えだすこと」、これがバラエティに富んだ人材のいるMOT-IPの強みといえるでしょう。

 

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その9―
―イノベーションの第七の機会:「新しい知識の出現」―

令和2年9月21日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 
 最初の稿で述べたように、イノベーションというと発見・発明に基づく新しい知識の活用と思われがちであるが、ドラッカーはイノベーションの7つの機会では信頼性や確実性の点で最も低い位置に置いている。これは、知識によるイノベーションは、実を結ぶまでのリードタイムが長い、失敗の確率も高い、不確実性や実用化までの付随する問題がある、などリスクが大きく他のイノベーションと異なっているためである。
 一つの発明の後ろには100の失敗があると言われるように、実用化までのリードタイムの長さに耐える企業体力や資金力が不可欠であり、中小企業が知識のイノベーションの機会を自社のみで掴むのは困難な場合が多い。また、一つの知識だけでは実現が難しく、科学や技術以外の知識を含め、いくつかの異なる知識の結合が必要とされることが多い。そのため中小企業は、新しい知識でのイノベーションを行う場合は充分留意して実施する必要がある。最初の稿で紹介したオープンイノベーションなど大学や他の研究機関の知識を活用する戦略は検討する価値がある。
 知識によるイノベーションでは必要な知識のすべてが用意されない限り、成功は難しく、以下の三つの特有の条件を必要としている。
 一つ目は、分析の必要性で、知識そのものに加えて、社会、経済、認識の変化などすべての要因を分析する必要がある。企業はその分析によって、イノベーションの成功のためにはいかなる要因が欠落しているかを把握し、自社または他社からそれを補うか、イノベーションを延期するか判断しなければならない。
 二つ目は、戦略の必要性で、新知識のイノベーションは大きな反響を呼び、注目を浴びることが多いが、スタートで失敗すると二度とチャンスがない。そのために三つの戦略のどれかを持つことが必要である。
① システム全体を自から開発し、それをすべて手に入れる戦略(例:ポラロイドカメラ)
② システム全体ではなく市場だけを確保する戦略(例:デュポンはナイロン市場を創造)
③ 戦略的に重要な能力に力を集中し、重点を占領する戦略(例:インテルのCPU)
 なお、戦略を持たないことや二つ以上の戦略を持つことは大きなリスクを持つことになるので、避けた方が賢明である。
 三つ目は、マネジメントの必要性で、知識によるイノベーションはリスクが大きいだけに、マネジメントと財務についての先見性を持ち、市場中心、市場志向であることが重要である。 特に顧客にとっての価値より技術的な価値に囚われることの無いようにマネジメントすることが必要である。
 このようなことから、本稿では中小企業に、第七の機会については特に勧めることはない。 勿論、顧客の立場に立ったアイデアで成功した事例も多くある。顧客にとって嬉しいと思われるアイデアを試すことで「Win-Win」となるのであれば、小さく始めることがよい。
 以上で、「イノベーションの7つの機会」の説明は終了する。
 「機会」の中には中小企業では対応しにくいものもあるが、自社を取り巻く環境の中で、自社の強みを発揮し「機会」を活用され、発展されることを祈念する。
 

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その8―
―イノベーションの第六の機会:「認識の変化」―

令和2年9月10日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 認識に変化とは、社会観、価値観、文化の変化と言える。認識の変化は定性的なこともあり、定量的に把握できる人口構成の変化より信頼性や確実性は相対的に低いという特徴を持っている。そしてこの変化は一時的であるか永続的であるかの見極めが難しいので、この変化に基づくイノベーションは、最初は小規模に、且つ具体的に始めることが肝要である。しかし、これをチャンスとして捉え大きなイノベーションを起こす可能性もある。
 ドラッカーは、認識の変化についてコップに入っている水を引き合いに出している。即ち、世の中の認識が、コップの水が「まだ半分入っている」と見ることから、「もう半分しかな い」と見ることに変わった時が、認識の変化起き、イノベーションの機会が生まれる。この認識の違いが行動の違いとなり、新しい文化やライフスタイルを生み出し、社会を変えてゆくことで新しい消費、市場が生まれる。
 認識の変化は定量化されたものではなく、また実体も掴みにくい。変化が定量化されたとしてもそのときは、イノベーションの機会とするには間に合わない。このため、機会を見つけるには、行動の変化を見つけることであるが、一時的変化か否かを見極めるには、年単位の時間軸が必要なことが多い。そのために、どの時期に認識が変化したかを正確に把握でき難いと考えた方がよい。
 しかし、他社がまだ把握していないタイミングでうまくとらえることで大きなイノベーションを起こすことが可能なる。この時、取り組みが早過ぎても、遅すぎても、イノベーションは期待できなく、タイミングを見極めるのが最も重要と言われている。
 認識の変化のイノベーションの例として、アメリカでの健康意識の変化がある。アメリカ人の肥満問題から健康ノイローゼが生まれ、健康と体形に関する異常な関心が増大し、これに気付いた出版関係者は、健康雑誌を創刊し、二年で 100 万部に達するまでになった。また健康食品チェーンも生まれ高収益を誇り、ジョギング用品も大きな産業となった。
 日本への観光客(特に中国からの観光客)についても、従来は爆買いに代表されるモノの購入が目的であったものが、最近はコト(サービス・体験等)に関心のある旅行者が多いことに気付いて、体験型のツアーを企画した観光業者が伸びている。これも価値観の変化が生じている機会を捉えた事業展開例である。
 いずれも、イノベーションを行う場所に近いところにいて、認識の変化に伴う行動の変化に敏感であることが成功要因であるので、中小企業であっても顧客の価値観や社会観などの認識の変化には、日頃から関心を持つことが欠かせない。
 しかし、冒頭で述べたように、認識の変化は不確定の要素があるので、このイノベーションは実行する場合も小さく始めることが肝要である。
 第七の機会である「新しい知識の出現」は次稿で説明する。

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その7―
―イノベーションの第五の機会:「人口構造の変化」―

令和2年7月27日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 これまでは、産業や市場の内部要因に着目した機会であったが、社会や知識など外部環境に現れるイノベーションの機会があり、その一つが、すでに起こった未来といわれる「人口構造の変化」である。これは、緩やかな変化のため皆が気付いているが当たり前となり、あまり意識に登っていないが、非常に重要な事実であることはいうまでもない。
 人口構造の変化は、人口の増減、年齢構成、雇用など変化が明白であり、見逃すこともなくその変化は逆転することもなく、変化の予測も容易で、影響がでるリードタイムも明らかである。このため、この変化によりどの様な事態が起きるかを予測し、自社にどのような影響を及ぼすかについて早期に検討し対処することでイノベーションの機会をものにできるかが問題となるが、一方で事業として成功するためにはそのタイミングも重要である。
 当然のことであるが、日本や欧米各国は人口の増加は無く、むしろ減少しているが、開発国ではまだ人口が増えている国もあり、もし中小企業がグローバルに事業展開をしているのであれば、事業としてみると変化に対応する市場が形成される時期は、国により異なるので注意を要する。
 人口構造の変化の中で、特に注意するのは年齢構成であり、その中で最大の年齢集団の変化(即ち人口の重心の移動)が重要となる。年齢集団ごとに、価値観も異なり、また典型的な行動形態があるので、これに対応して商品も変化してゆかねばならない。この時に、現場に行き、見て、聞いて変化の実態をきちんと掴むことがイノベーションの機会となる。
 日本の場合は、少子高齢化が顕著であり、生産人口の減少、非生産人口の増加に対応して行くことが大きな問題となっている。このために生産性の向上が欠かせなく、これを解決するイノベーションが成功するチャンスが大きい。
 しかし、この生産人口の減少は、統計的には 30 年以上前から明らかにされ、警告されていたことでもある。そして、当時は一部の製造業で問題となり、自動化設備やロボットの導入がされて、そのニーズに対応した関連企業が業績を上げてきた。現在は、間接部門も含めた労働人口の減少対策が必要になっており、更に高齢者を介護する人も不足していることから、これに対応する高度な機能を持った介護ロボットやRPAに代表される業務効率化システムなどの新しい労働の担い手が期待されており、この機会を活用できる中小企業は伸びるチャンスがある。
 労働人口の減少は、中小企業においては、自社の労働力不足として切実な問題である場合も多いので、これの解決策を生み出せれば、自社のノウハウを活かしたイノベーションを起こすことも可能である。例えばテレワークを使った生産性の向上などは有望である。
 IT技術(デジタル技術)を活用して行くことが不可欠な時代となってきているが、中小企業の中にはIT技術を持つ人材が不足している例は多い。このため、IT技術を使いこなす人材を育成しつつ、自社事業のIT資源を高め、その応用展開を図ってゆく上で、オープンイノベーションで述べた外部組織との協同化も視野におき、人口構造の変化に対応してゆくことも必要である。
 第六の機会である「認識の変化」は次稿で説明する。

知的財産コンサルタントあれこれ 6
〜 請求項の理解 〜

令和2年7月27日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 技術者や幹部に競合特許の説明をするときに意外と苦労するのが特許の請求の範囲(権利範囲)を伝えるときです。しかも、出願経験のある方は、請求の範囲を読めるだけに誤解をしておられるケースを見かけます。
 請求の範囲とは、私はこういう技術の権利を持っています、ということを文章で記載したものです。そして、請求の範囲は、個々の技術である構成要素に分解できます。ひとつの構成要素では権利にはなっておらず、すべての構成要素を組み合わせることでひとつの権利(請求の範囲)となっています。
 私の経験したケースでは、競合の特許の請求項に記載された構成要素の一部だけを見て「われわれの製品は侵害している!」と思い違いしている幹部の方がおられました。たとえば、競合特許の請求項の構成要素がA、B、C、Dで構成されていることに対して、B、Cが自社の製品の構成であるため「競合特許に先を越されてしまった、われわれの製品は競合特許を侵害している!」と考えてしまっていました。たとえば、A(消しゴム)、B(星形の)、C(鉛筆)、D(消しゴムは鉛筆に固定されている)としましょう。競合の特許は「消しゴムと星形の鉛筆とを有し、消しゴムは鉛筆に固定されている」ものとなりますが、「星形の鉛筆」を作っている自社は競合特許を侵害していると思ってしまったわけです。
 特許はオールエレメントルール、つまり全ての構成要素が同一である場合に、特許と対象物(自社の製品)が同一である、と考えるところ、一部の構成要素に記載されているだけで、「同一の箇所がある」=「特許と自社製品が同一である」、と思い込んでしまっていました。ここは、大変解りにくいところらしく、丁寧に、オールエレメントルールを説明してもなかなか理解されませんでした。この傾向は、忙しく特許について熟考する時間をとりにくい幹部ほどオールエレメントルールを理解していただくのは難しいようです。請求項の一部に同じ内容の技術が記載されていたら、それでもうアウト!と思ってしまうようです。
 先ほどの例で言えば、星形の鉛筆に消しゴムが固定されていなければ競合特許を侵害していることになりません。
 では、どういう風に特許の請求項を理解していけばよいでしょうか。私の場合は、請求項の段落あるいは句読点(。 、)ごとの一文にきって、その一文ごとに該当しているかどうかを○×をつける方法を推奨しています。ほとんどの技術者の方はこの方法で説明すると、請求項の権利範囲を正確に把握してくれるようです。また、これをエクセルなどの表にして、請求項の構成要素の各一文を一セルごとに記載し、その横のセルに○や×を技術者に記載させ、その横のセルに×の場合の理由を記載させると、誰でもその表を見ることで、正確に該非を判断できますし、表の作成者が勘違いしている場合の指摘も容易となります。
 請求項の解釈は本来なら弁理士の鑑定などが必要ですが、全ての特許を高額な鑑定費用を支払って鑑定してもらうわけにはいきません。少なくとも、文言上で同一であるかどうかの判断は、上記の表で判断できます。そこで請求項の構成要素がまったく違う、あるいはもともと請求項の構成要素を備えていない、などのことがわかれば、同一ではないと判断できますので、あわてることもないでしょう。まず第一歩として、特許の請求項を段落や句読点で分解して、表にして確認することをお勧めいたします。
 なお、この方法は簡易的な方法ですので、重要な製品や競合特許については特許事務所や知財担当に相談するのが良いでしょう。

 

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その6―
―イノベーションの第四の機会:「産業と市場の構造変化」―

令和2年7月10日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 産業や市場の構造は恒常的で安定的に見えるようであるが、時間とともに変化してゆくものである。そして、従来のやり方では通用しなくなってきたとき、構造変化の兆候を早期に捉えることが、イノベーションの第四の機会である。
 構造変化は、産業内にいる企業にとっては、変化への対応に追われ脅威と映るが、外部の異業種企業にとっては参入のチャンスとなる。自動車業界で見ると、ガソリンエンジンにかわる電気自動車の出現という市場の変化に対して、異業種のテスラの参入は良い例である。従来の自動車メーカーは、古くからある系列販売店や多くの機械部品メーカーとサプライチェーンを構成しているため、これを簡単には解除できないこともあり、変化への対応が遅れて異業種からの参入を許す結果となっている。一方で、テスラはそのようなしがらみが無く、過去に投資した設備の償却という負担もないため、現時点で最適な部品や設備を採用することで、既存メーカーに対する生産的な優位性を構築して行くことができる。
 では、産業構造の変化の兆候はどう見付けらるのだろうか?
 ドラッカーは、次のような場合に変化は確実に起きるとしている。即ち、
① ある産業が経済成長や人口増加を上回る速さで成長するとき、
② 産業の規模が2倍になるとき、 
③ いくつかの技術が合体したとき、 
④ 仕事の仕方が急速に変わるとき(現在のコロナ問題に伴うテレワークの拡大等)、 
⑤ 世界的な規制動向により、産業や市場がその対応をしなければ成立しなくなったとき、
 その様な時に、構造変化が起きるので、その兆候を見逃すことにないように中小企業は注意し、兆候を見付けたら準備をすることである。
 産業構造の変化を捉えるイノベーションが成功するには、一つだけ重要な条件がある。それは、単純でなければならないということである。複雑なものは上手くゆかない。
 市場の変化は、世界的な事業環境の変化、例えば、地球温暖化対策のための規制の変化によるものから、後稿で述べる第五の機会である「人口構造の変化」と重複した機会まで、いろいろな要因が重なっていることに留意しなければならない。
 例えば、高齢化に伴う要介護老人の増加は、介護産業市場の規模を大きくし、その結果多くの企業が参入し、新しい介護サービスを生んできていることからも明らかである。
 技術の合体でみれば、スマートフォンは、パソコンと電話が合体し、新しい価値を生み、既存の携帯電話を駆逐して、新しい市場を生んだ例である。任天堂やソニーは、ゲーム市場を家庭まで開拓、更にスマートフォンアプリで、屋外まで市場を広げた。
 近年は、デジタル技術を活用した市場開拓が進んでおり、IT技術を持つ中小企業にとっては参入の機会が多くなっている。また身軽な中小企業であれば、上記兆候が掴めなくても、産業や市場の構造変化により、伸びてゆく関係企業の近くにいれば、その動きに注意し変化を読み取り、自社の対応をすることも可能である。 
 第五の機会である「人口構造の変化」は次稿で説明する。

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その5―
―イノベーションの第三の機会:「ニーズ」―

令和2年6月14日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 「必要は発明に母」と言われている。前稿の予期せぬことやギャップは、すでに存在するイノベーションの機会であるが、まだ具体化していないニーズは、まさに「イノベーションの母」と言える。しかしここでのニーズは、漠然としたニーズではなく、企業や産業の内部に存在する具体的なものである。その主なものは、①プロセス上のニーズ、②労働力上のニーズ、③知識上のニーズであるが、いずれも状況からでなく、課題から発見できる。
プロセス・ニーズでは、どこかのプロセスに欠陥や非効率などが隠れており、その解決によりイノベーションが起きると直ちに受け入れられるものである。例えば、前稿のレジでの行列解消ニーズもこれに該当する。また日本の道路事情は狭く曲がりくねっており、自動車事故が多かったが、あらゆる方向からの光を反射する視線誘導標ができたことで、事故を大幅減少した例も同様である。この様に課題解決のニーズは昔から存在していたと思われるがそれに気づき、イノベーションを起こすところまで実行することが重要である。プロセス・ニーズはそのプロセスの関係者は気が付きやすので、感度の高いアンテナを持つ中小企業にチャンスがある。
労働力ニーズでは、労働力の需給の著しい変化の過程に機会が隠れている。ロボットは少子化による製造業の人手不足から急激に普及した。これは、特に日本は欧米より早く少子化が始まり、労働不足対策としてロボット化のイノベーションが先行し、ロボット先進国になったといわれている。高機能なロボットではなく、安価でコンパクトなロボットや周辺の省力化機器の開発では中小企業の出番があり、その分野に参入して成功した例がある。近年は間接業務のロボット化ニーズが高く、IT技術を持つベンチャー企業はこの分野に参入し、イノベーションを起こす機会がある。
知識ニーズとは、「研究開発」を目的としたニーズで、必要とされる知識の欠落に機会が隠れている。但し知識のニーズを満たすには知的な発見、発明が必要である。この機会を捉えるには研究開発の資源が必要とされるので、中小企業の対応は制約される場合がある。
 中小企業にチャンスのある「プロセス・ニーズ」に基づくイノベーションを成功させるには、ドラッカーは、以下の三つの条件が必要としている。三つの条件は、
ⅰ)何がニーズであるかが明確に理解されている事、目標の達成のために何が必要なのかが明らかである事、
ⅱ)イノベーションに必要な知識が現在の科学技術で手に入り、検討できる事、
ⅲ)得られた解決策がそれを使うはずの人の仕事の方法や価値観に一致している事、すなわち、解決策が分かりやすく、易しく使いこなせることである。難しく使いこなすのが大変なものは受け入れられない。
 上記のように、ニーズに対応する製品やシステムの開発では本当の顧客は誰で、どんなニーズを持っているか、そのニーズを解決する手段を簡単に提供出来るか、それが顧客にとって価値があるかということをもう一度振り返ることで、真剣に検討する中小企業は課題を解決するイノベーションの機会を掴むことができる。
 第四の機会である「産業と市場の構造変化」は次稿で説明する。

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その4―
―イノベーションの第二の機会:「ギャップの存在」―

令和2年5月18日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 「ギャップ」とは、現実にあるものとあるべきものとの乖離、不一致、不調和である。何故ギャップが存在しているか分からない場合もあるが、ギャップの存在はイノベーション の機会を示す兆候である。ギャップはすでに起こった変化や起こりうる変化の兆候であり、予期せぬ事象と同じように、一つの産業、市場、プロセスの内部に存在する。従って、この内部や周辺にいる者は、はっきりと認識することができる。即ち、この内部にいて、現場の前線で仕事をしている中小・中堅企業は早い段階で気が付くことができる。問題は、ギャップを当然のものとして受け止め、疑問を持たずに見逃すことであり、その例は多い。 
    イノベーションの機会としてのギャップは、大きくは以下の 4 つに分類される。 
 (ⅰ)業績ギャップ:製品やサービスの需要が伸びているにも拘らず、業績がそれに比例して伸びていないという状況で、産業全体でのマクロ的な現象であることが多く、大企業は需要の増大と業績不振とのギャップを埋めるのに忙しく、イノベーションの機会として利用する対応に遅れがちで、中小の専門企業が有利と言われている。中小企業は、この時にこのギャップが生じている原因を追究するのではなく、この機会で何が出来るかを考え、行動することである。 
 ()認識ギャップ:物事を見誤たり、現実について誤った認識を持っている状況である。例えば、「メガネは視力が悪くなった人がするもの」という認識に対して、JINS は、PC やスマホからブルーライトが多く発生していることに気付き、これをカットするメガネを商品化した。眼鏡は視力矯正だけでなく、「目を守るもの」としての機能がないことに気付き、これを付加し新市場を開拓した。中小企業も業界の常識を一度見直すことを勧めたい。 
 ()価値観ギャップ:顧客が実際に持つ価値観と企業側が顧客が持っていると思い込んでいる価値観の間のギャップである。乗用車は、昔は持つことがステータスシンボルの意味合いがあり、セダンが主流であったが、現在は、その様な価値観が変わり、セダンよりも家族で利用するのに便利な、ワゴンやワンボックスタイプに価値を持つ人が多く、その機種が増えている。 中小企業の場合は、顧客の顧客である消費者の価値観の変化にも注意を払うことで、変化の先取りが可能となる。  
 ()プロセス・ギャップ:仕事のプロセスにボトルネック(制約要因)があり、顧客の不便・不満に応えられていない状況である。プロセス・ギャップは、簡単には見つけられないと言われており、その世界の中にいるものだけが気が付いて利用できる。逆に言えば外部の者が気づきにくく、参入してこないので、その分野の中小企業がイノベーションの機会を先に活用することができる。 
    スーパーなどのレジで顧客が購入した商品の清算処理は、昔は金額を打込みする処理のために、レジに長い行列ができ、顧客に不便・不満を与えていたが、POSレジシステムは、商品にバーコードを貼っておけば、価格の入力は不要で、商品の清算処理は早く、正確に出来るようになり、たちまち普及した例がある。 
 このように身近にある顧客の不便や不満を解決するプロセスのイノベーションの機会はその現場に近い中小企業関係者が最も気づき易いのでアンテナを張っておくべきである。第 三 の 機 会 で あ る 「 ニ ー ズ 」 は 次 稿 で 説 明 す る 。

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その3―
―イノベーションの第一の機会:「予期せぬこと」―

令和2年4月20日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 「予期せぬこと」は、何故イノベーションの確実性の一番目の項目に挙げられているのか? それはこの機会が多く、これに気が付き対応できる可能性が高いからである。
 「予期せぬこと」とは、1)予期せぬ成功、2)予期せぬ失敗、3)予期せぬ外部の変化、であると前稿で述べた。
  「予期せぬ成功」とは、予想していなかったのに成果が出たことで、予想していなかった成功にはイノベーションの大きな機会がそこに潜んでいる。自社が前提としていた事業、市場、顧客に変化が起こり、予期しない成功が生まれたと考えられ、その変化の機会を捉えて、さらに追求して行くことが重要である。
 予期しない変化が現実に起きており、成果が出ている機会を掴むことは、イノベーションを実現できる確実性が高い。
 しかし、自社の前提に固守していると、この変化に気が付かないことがある。予期せぬ成功は、偶然の出来事として、当事者や周囲の関係者も気が付かずにそのまま機会を見逃がしてしまうことがある。ドラッカーは、当時ニューヨーク最大の百貨店メイシーで、主力商品が衣料であることに拘り、予期せぬ家電品の売り上げ増加の成功に注目せずに見逃して、機会を逸した事例をあげて注意を促している。
 このために、予期せぬ成功は目立たせることが重要で、例えば、受注や売上げ月報の1ページ目に、伸び率の変化のグラフなどを記載して、何故かと注目と議論を促す工夫をするのが良い。この時、次の問いを行うことが重要である。
 (ⅰ)この変化はなぜ起きているのか、(ⅱ)これを機会として利用することは、自社に    とって意味があるか。(ⅲ)その行き着く先はどこか。(ⅳ)機会を掴むために何を行なわな ければならないか、(ⅴ)それによって仕事の仕方はどう変わるか。
  「予期せぬ失敗」とは、従来上手くいっていたことや、その延長線で誰もが成功すると思っていたことが、予想と外れて低迷したり失敗することを言う。この時、計画や実施上のミスはなく、慎重に計画して設計・実施したものが失敗した時は、何らかの要因や環境の変化が存在することで生じたと注意し、その真因を追究することで、変化に対応すべきイノベーションの機会を見付けることができる。
 フォードはエドセルという新車発売で失敗をしたが、これを分析してライフスタイルの変化により市場区分が変わり、市場のニーズに適応していないことがわかり、新市場に合うサンダーバードを開発・投入することで成功に導いた。中小企業でも失敗を糧に、前述した問いを行い、機会を見付けることが重要である。
  「予期せぬ外部の変化」とは、自社の事業にとっては当面の所、成功も失敗ももたらすこ とのない外部の変化や出来事をいう。このため、気が付かないこともあるが、この変化に注 目し、これを活用できないかと検討し、他社より一歩先んじて変化に対応することで、競争 環境にイノベーションを起こすことができる。IBMのパソコンの成功例が有名であるが、 一般的には、余力のある企業でないと検討はできない。経営資源が限られている中小企業で はこの変化への検討や対応を無理に行うことはないが、他社の成功例には注意しておく。    
 二番目の機会である「ギャップの存在」は次回の稿で説明する。

知的財産コンサルタントあれこれ 5
〜 他社の技術に目を配る 〜

令和2年4月20日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 他社の技術に目を配る方法としてはSDI(Selective Dissemination of Information)はたいへん有効です。このSDIを継続していると、他社の経営戦略も見えてきます。SDIで競合企業を見ていると、あるとき継続的に特定分野に出願していることがあります。これより、この競合企業はその特定分野に経営資源を集中して積極的な活動をしていることが推定されます。そして、自社との彼我比較をして自社の活動を検討することができます。
 SDIは、有償の特許検索データベースで調査したい対象を検索式で作成すると、新しい公開特許や登録特許を定期的(週1,2回)に配信してくれるものです。一般にはなじみの薄いものですが、継続して競合企業や業界動向の監視ができるので大変有効なものです。有償の特許検索データベースをお持ちでない方は、独立行政法人工業所有権情報・研修館の特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」(ジェイプラットパット)を利用するのも良いでしょう。定期的にJ-PlatPat< https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage>で検索して競合特許を調べると良いでしょう。この時に、過去調べたものを再び見なくても済むように、公開日を指定して、新しい公開特許公報や特許公報を調べるようにするのが良いでしょう。
 企業の知財レベルを上げていくためには技術者の知財マインドを高めることが重要です。しかし、技術者の知財マインドを高めるのはなかなか難しいものです。技術者の知財マインドを高める私の取り組みは、このSDIの図付き一覧の各特許に私なりの一言抄録(30-50字)を記載して定期的に技術者に配信するものです。はたしてSDIの一覧を技術者の方が見てくれているかどうかは不明ですが、知財マインドが高くなってきている技術者からは、配信した一覧についての質問などが寄せられるようになりました。
 また、そのように定期的に特許に関する情報を発信していると、開発途中の製品について、他社技術との比較調査の希望が寄せられるようにもなりました。総じて、知財マインドの低い技術者は多いですが、課内に知財マインドの高い技術者の方を育てることができると「それ事前に他社特許を調べた方が良くないか?」という意見交換もされるらしく、少しずつではありますが、相談は増えてきています。
 まさに継続こそ力なりです。

 

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その2―
―イノベーションのための7つの機会―

令和2年3月25日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 ドラッカーは、イノベーションを実現するための機会が 7 つあり、これを見付けて対応することが重要と説いている。そして、イノベーションのための機会として、以下の 7 つを挙げている。①予期せぬこと、②ギャップの存在、③ニーズ、④産業と市場の構造変化、⑤人口構成の変化、⑥認識の変化、⑦新しい知識の出現。
 そして、この並びの順番も意味があり、若い番号程イノベーションを実現できる確実性が高いとしている。7 番目の新しい知識の出現とは、研究開発による発明・発見やこれを応用した技術革新を意味しているが、これはリスクが高く確実性の点では低い評価になっていることが注目される。
 確かに革新的な技術開発の陰には多くの失敗があり、豊富な資金力のある大企業でなければ技術開発に取り組むことは困難と言える。中小・中堅企業がイノベーションを実現するためには、リスクの高い「新しい知識」の機会よりも並び順の早い項目に着目して取り組む方が良く、無理に技術革新に挑戦する必要はない。
 なお、この7つの機会は、お互いに重複していることもあり、それぞれが独立したものでないことに注意する必要がある。例えば、高齢化による⑤の人口構成の変化は、生産人口の減少や介護ニーズの増大などにより、④の産業と市場の構造変化に影響を与えている。イノベーションを実現させるためには、単眼的アプローチではなく、複数の機会を分析する複眼的な取り組みが重要である。
 当然、自社の能力だけで対応出来ないケースもあり、やりたいイノベーションを実現させるのに力不足の場合はオープンイノベーションを検討して行くことが必要である。
 オープンイノベーションとは、大学、国や地方自治体の研究開発機関、異業種の企業などと提携し、自社に足りないアイデア、知識、技術を組み合わせることで新たなビジネスを実現して行くものであり、中小・中堅企業が取りえる有益な施策である。但しオープンイノベーションには、シナジー効果による迅速な成果の獲得というメリットがある一方で、アイデアや技術の情報漏洩のリスクなどのデメリットもあることを理解して、取り組むことが必要である。そのため、オープンイノベーションでは、自社の特許は可能な限り事前に権利化の処理を済ませておくことは必須である。
 では、話を戻して、具体的にはどの様に7つの機会を見付けてゆくのが良いかを順に説明してゆく。
 まず、①の「予期せぬこと」であるが、これには3つの種類がある。即ち、1)予期せぬ成功、2)予期せぬ失敗、3)予期せぬ外部の変化、である。
 これは、下記文献も追加参照し、次回の稿で説明する。
(参考文献:ドラッガーの「イノベーションがわかる本」中野明 著,秀和システム、
「ビジネス理論」集中講義 安部徹也 著、日本実業出版社)

中小・中堅企業こそイノベーションの機会が身近にある!―その1―
―イノベーションとは―

令和2年3月1日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 日本企業を取り巻く経済環境は、年々厳しくなってきている。このため、企業が生き残るにはイノベーションが必要であると言われてきている。
 しかし、イノベーションを起こせるのは大企業であって、中小・中堅企業はその力はなかなか持てないと諦めている企業の経営者は多いと聞く。しかしその考えには大きな誤解があり、中小中堅企業こそイノベーションの機会を身近に持っているのではないだろうか?
 まず、イノベーションは、日本では過去に「技術革新」と訳されたことから、革新的発明と同義的に捉えられて、自社ではそのような発明を生み出す研究開発の資源はないと考えている経営者が多いと聞くが、イノベーションは革新的発明だけではない。
 イノベーションとは何かを知るためには、この言葉の元祖であるシューペンターの考え方を理解するのが良い。彼の著書「経済発展の理論」(岩波書店)の中で、イノベーションは、「経済や社会の革新」であり、経済や社会にインパクトを与える変革をもたらす新しい創造全般を指している。そして「新結合」がイノベーションに重要と見なしている。
 新結合は、「世の中に存在しているものから、新しい価値のあるものを組み合わせること」と言い換えることができる。即ち、発明とか技術革新に限られることなく、今ある製品、プロセス、仕組み、方向、組織、財貨、古い特許などを新結合し、より新しい価値が生み出され、革新的な経済発展がなされるとき、これをイノベーションと呼ぶ。例えば、新結合により生まれた新しい財貨の最近の例では、スマートホンがある。
 研究開発資源が少ない中小・中堅企業でも、発明や技術革新でなく、価値のある新結合を行うことで、小さなイノベーションを生みだし、それを大きく育てることはできるのではないか? なお、ここで大切なことは、イノベーションは顧客にとって価値があるものでなければならないことである。
 イノベーションの機会を見付けることができれば、中小・中堅企業でも十分イノベーションを起こすことができ、企業間競争を生き残り発展することができる。
 では、イノベーションの機会を見付けるには何に気をつけなければならないのか?これについて、ドラッカーは、「イノベーションのための7つの機会」があり、これを見付けることが重要と説いている。
 そして、この7つの機会は市場に近く、その変化に最初に直面する立場にある中小企業の方が早く気が付けると思われるので、これを見付けて対応できる身軽な中小企業はイノベーションを大企業よりも早く実現できる可能性が高い。一方で、大企業は従来の成功体験や現在の主力製品の維持に囚われて、変化が遅れ、又は取り組まないことが多く、所謂「イノベーションのジレンマ」に陥るケースが多く、中小・中堅企業にとっては有利である。
 では、7つの機会とは何か? 次稿で、ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」(ダイヤモンド社)の著書を参考に説明する。

知的財産コンサルタントあれこれ 4
〜 知財意識の低い技術者 〜

平成30年12月6日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 企業の知的財産に関わっていくとき「知財意識の低い技術者もいる」ということを前提に企業の知的財産を運営していく必要があります。
 私の経験した事例では、若い技術者から「商品を販売することになったのですが、付属部品を競合のデッドコピーとしました。競合特許に抵触しないでしょうか?」という問い合わせがありました。これには、いくつかの問題点があるのですが、その話は後に譲るとして、この問いかけに対して調査しました。
 私は「競合他社からは、その付属品に関する特許、実用新案、意匠などは出願されていないようです。」と回答しました。
 若い技術者は「それはよかった、ではこのまま販売します。」ということだったので、私は「ところで、製品本体については他社の特許などを調査しましたか?」と問いかけました。
 そのとき若い技術者は「大丈夫です!製品本体は自分が考えて設計しましたから!」・・・私はひっくり返りそうになりました。
 自分が考えたものであっても、他社の知的財産を侵害する可能性は充分あります。というより、デッドコピーするより用心する必要があるかもしれません。デッドコピーは、他社の権利範囲に入る可能性もありますが、他社の権利が終了している可能性もあり、公知となった先行技術とみなすことができます。ところが、自社で開発した製品は技術者が「新しい」または「独自」と考えるほど、他社でも一歩先に知的財産権の取得に動いている可能性があるからです。
 さて「その話は後に譲る」とした問題点のひとつは、発売間近になって知的財産の相談となったことです。発売間近で他社の権利を侵害しているということが判明した場合はどうなるのでしょうか?それまでの開発費、開発に関わった人件費、さらには準備された発売前の製品、カタログ、協力会社へのアナウンスなどがすべて無駄になってしまう危険があり、場合によっては会社の信用問題になるかもしれません。開発が始まった時点、遅くとも開発が終了し生産に入る前には、知的財産権として問題がないか確認をしないととんでもない手戻りになってしまいます。
 製品を企画して開発を開始した時には、まず他社特許を調査して障害となる生きた特許がないかを確認することが大切です。そして、障害となりそうな特許がある場合は、その特許の権利範囲からはずれるように開発を再検討する、実施権のライセンスを検討する、その特許の無効化を検討する、開発を中止するなどの対応策をとることが大切です。
 自社の技術を過信せず、他社の知的財産に目を配ることが大切です。定常的に他社の技術に目を配る方法については次回のコラムで紹介いたします。

 

知的財産コンサルタントあれこれ 3
〜 日本語で外国特許調査? 〜

平成30年9月9日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 特許を手軽に調査したいときに無料の特許調査データベースのJ-Platpat※を利用している方も多いと思います。私もよく使っていますが、一覧表示の内容が貧弱、特許分類とキーワードの検索では自由度が少ない、とかゆいところに手が届かないため、効率的に調査をしたいときには有料のデータベースを使っています。
 しかし、J-PlatPatには「え~っ、こんなこともできるの!」という特徴もあり、そのひとつを紹介させていただきます。
J-PlatPatの特許・実用新案検索にて外国特許文献を日本語で検索できる機能です。もちろん、全ての外国文献に対応しているわけではないので「あったらめっけもん」という考えで使っています。
 では、どのように利用するかというと、
 1.J-PlatPatのページから「トップページ>特許・実用新案>特許・実用新案検索」へと進みます。2.特許・実用新案検索ページの「種別」の「外国」の「主要5庁」にチェックします。このとき、「WIPO(WO)」のチェックははずします。理由は日本語文献が多量に検索されてしまうからです。3.「国内」と「非特許」のチェックもはずします。4.「テキスト検索対象」は「和文」をチェック。5.「検索キーワード」に自分の調べたいキーワードを入れて「検索」ボタンをクリック。6.表示された「外国文献ヒット件数」の「一覧表示」をクリック。7.一覧で「代表文献番号」をクリックして文献内容を表示します。8.ここで「和文抄録」をクリックすると和文による抄録が表示されます。9.この画面で「次の文献」をクリックして一覧表示された文献の抄録を順次確認できます。10.原文を確認したいときは「原文イメージ表示」や「原文PDF表示」のタブで原文や図を確認できます。
 私は無効資料を調査していたのですが、どうもいい検索ができなかったので「あったらめっけもん」と思ってアメリカとヨーロッパを和文検索しました。機械翻訳ではなく、人手作業による和文抄録は読みやすく内容を理解しやすいものです。その中で、近いなと思ったら特許明細書のPdfを見て該当しそうか調査しました。残念ながら、該当する文献は見つかりませんでしたが、意外と使いやすいことや、期待していた文献に近いものもありました。
 また、原文の特許を読む前に理解の助けにしたいときなど「トップページ>特許・実用新案>外国公報DB」で直接文献番号を入力して和文抄録を読んでいます。
 みなさんも一度は試してみてはいかがですか。
※注(J-PlatPat:特許情報プラットフォーム、独立行政法人工業所有権情報・研修館が運営する特許、実用新案、意匠、商標を無料で検索できるデータベース。)

 

知的財産コンサルタントあれこれ 2
〜 特許調査をする 〜

平成30年7月20日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 企業の知的財産コンサルタントをしていて、うれしい、と思うことがあります。それは、発明のアイデアをまとめた「出願依頼書」の先行技術調査の欄に「特許調査済み」とあるときです。自分の発明のアイデアだけでなく、先行技術を調査したうえでアイデアをまとめる、という視野を発明者が持っていることは大変良いことです。
 ところが残念なことにこの調査がたいへん雑なのです。Google検索に慣れてしまっている方が多いこのごろですが、キーワード検索では何らかの答えが出ます。Google検索であればお勧めの検索結果が上位に出ますし、特許検索ですと最新順などで一覧が出てきます。調査した側としては、なんか調べた気になってしまいますよね。ただ、そのキーワードで良いの?と思うことがほとんどです。
 では、どういう検索が良いでしょうか?特許検索は奥を極めればいくらでも解説できるものですが、技術者が出願前に先行技術調査をするのであれば、キーワードと特許分類の調査が良いと思います。以下に、インターネットのサイトを利用した調査方法を説明いたします。
 
 特許調査では、無料の特許調査データベースの特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)<https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage>の「特許・実用新案検索」を使うのがお手軽でしょう。検索項目のマスから「全文」あるいは「請求の範囲」を選び、検索キーワードのマスにキーワードを入れて検索します。この時、注意いただきたいことは同義語のキーワードを複数使うことです。一つのマスに空欄を挟んでキーワードを入れていくとorとなります。マスとマスはandになりますので、これで複数のキーワードでの掛算検索ができます。
 キーワードを増やす方法としては、weblio類語辞書<https://thesaurus.weblio.jp/category/wrugj>を使って他のキーワードを見つけても良いでしょう。キーワードで注意したいのは、社内だけで使っているような専門用語、技術用語などは他者の特許では別なキーワードになっている可能性があります。ピンポイントのキーワードにならないように注意しましょう。このキーワード検索で、一覧の特許数は多いけどタイトルで無関係とわかる特許が多いようであれば、特許分類を使ってみてください。特許分類にはIPC、FI、Fタームなどがありますが、初めて特許分類を使うのであればIPCが無難でしょう。特許分類とキーワードを掛け合わせると、調査結果の件数を絞ることができます。IPCはキーワード検索で調べた特許の1ページ目に記載してあります。このIPCの意味についてはJ-PlatPatのパテントマップガイダンスで調べることができます。具体的な手順については、ネットや本で紹介されているのでご一読ください。
 
 特許調査は複数の同義語を使ってキーワード検索、関係がない特許が多いようでしたらIPCなどの特許分類とキーワードを使って検索してみてください。特許検索にはいろいろと試行錯誤していく楽しみもありますよ。

 

知的財産コンサルタントあれこれ 1
〜技術者からみた知的財産〜

平成30年6月26日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 落合克弘

 私は大手メーカーで新規事業の開発やマーケティング、生産、販売などに関わってまいりました。その間に技術士(電気・電子)の資格を取ることができました。しかし、技術の違ういくつかの新規事業に携わったために、自分のコアとなる技術の足場をしっかり構築できませんでした。そんな会社員生活の終盤、退職の5年前より知的財産室の所属となり、発明を生む側から発明を出願する側に立場が変わりました。その時、これこそ私のコアとする仕事にできる、と直感いたしました。その直感があっていたかどうかは置いておき、退職して3年、この知的財産の分野で仕事を続けられているのは、たいへん幸せなことだと思っています。

 特許の仕事をしていると、私のように技術者から知的財産の仕事に関わるようになった方と多く出会います。私の在職した大手メーカーの知的財産室も9割が元技術者の方であり、その大半の方が研究所などの研究開発職を経験した方たちでした。
 さて、そんな技術者上がりの私が知的財産室に配属されて戸惑ったことは、知的財産にこれから関わっていく方にも参考になる経験と思いますので、そのお話しをさせていただきます。
 
 知的財産室に配属されて特許の出願の担当となって戸惑ったことは「上位概念化」という考え方です。技術者時代の私は特許というものをずいぶんと漠然ととらえていました。そのため、自分の発明をそのままに特許の請求項とすればよい、と考えていました。しかし、知的財産室の方々、また弁理士や特許技術者の方は、広い権利範囲とするため、その発明をいかに上位概念化するかということをまずお話しされます。発明を生む技術者と、その技術者の発明を出願する方の発想のギャップに最初はたいへん驚きました。
 
 上位概念化というのは簡単に言えば一般化です。「鉄材」を「金属材」と言えば、より広く材料を包含するので上位概念化できたと言えます。しかし、ただやみくもに上位概念化すればよいかというと、上位概念化すると先行技術が含まれる概念まで入ってきてしまいます。上位概念に先行技術が含まれる場合は、特許は拒絶され権利化できません。そこで、どこまで上位概念化するか、どういう上位概念化するか(例えば、鉄材を金属材と上位概念化するか、板材と上位概念化するか)など、その点を知財担当者と発明者は議論して詰めていきます。発明者の自分の発明だけに目が行っていた技術者時代ではあまり思考することの無かった考え方でした。
 
 私は、技術者時代は特許の権利範囲を漠然と捉えていましたし、特許を成立(権利化)させるための取り組みに対しては考えも及びませんでした。そんな私が技術者の発明を拾い出し特許にしていった経験を、今後、記事にまとめさせていただき、知的財産に興味のある技術者の方の参考になれば幸いです。

 

企業における研究開発と知財の利用

平成29年10月13日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
森田 敬愛

 私は企業勤務時代、燃料電池用電極触媒の研究開発に長らく関わってきましたが、これとは全く異分野の材料開発に従事したことがあります。「全く異分野」と書きましたが、開発の準備段階で関連技術の文献調査を行った時に、電極触媒ひいては触媒技術全般に関わる事項が多いことに気づき、分野は違えども技術を突き詰めていくといろいろなところでつながっているものだなと、基本の大切さを再認識しました。
 
 その後、材料開発がある程度進んだところで、本当に意図したような材料になっているのかを確認するために、これまでとは違う分析手法が必要となってきました。お金と時間をかければ可能な方法はあったのですが、簡便にできてかつ確実性が高い分析ができないかと、いろいろと文献を探しました。今の時代はインターネットを通じて様々な調査ツールが提供されており、文献調査は格段にやりやすくなったのはITの進化の賜物です。しかし、対象としている技術をきちんと理解していないと、目的とする文献にはなかなかたどり着けないのではないでしょうか。
 
 果たして、自分が探していた情報に関連した文献が見つかり、分析も社内の装置で十分できそうだということで、実際に試してみました。試行錯誤がありましたが、自分の仮説を証明できるデータが得られ、開発業務に一区切りがつきました。先達が残してくれた莫大な知財(ここでは特許に限らず全ての技術文献を含む)の中から、自分の目的とした情報を的確に探し出し、研究開発における実務(実験)にうまく役立てることができたと思っています。
 
 3年ほど前に技術士事務所を開業して以来、様々な企業とお付き合いをする中で、中小企業では知財を利用した技術開発が上手く出来ていない状況が多いように感じています。人員も時間もかけられないという事情の他に、どのように技術調査をしたらよいのか分からないという場合もあるのではないでしょうか。そのような時には、少し費用をかけてでも外部に依頼した方が効率よく仕事が進むのであれば、検討する価値があると思います。
 
 いざ社外に技術相談や調査を依頼しようとなったときに、誰に依頼するかで悩むことになるかもしれません。想定している技術にピンポイントで経験のある人を探すのはなかなか困難です。そのような時は、様々な分野に精通した技術のプロがいるコンサルティング機関等に相談することをお勧めします。ピンポイントで経験のある人がいなくとも、その周辺分野に精通した技術のプロであれば勘所がすぐにわかり、技術調査等もすぐに対応できるはずです。技術のプロである「技術士」や知財(特許)のプロである「弁理士」がそろっている機関を探すのが一つの方法かと思います。
 
 いま何か技術課題を抱えている方がこの文章を目にされたのなら、多才なプロがいるMOT-IPに是非ご連絡下さい。解決の糸口が見つかることをお約束します。

 

「アイデアのつくり方 」考

平成29年01月29日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

 特許を取るには、アイデアが勝負であるといわれる。しかし、簡単にアイデアが生まれれば苦労はしない。ところが、世の中に「アイデアのつくり方」という冊子が販売されている。しかも価格は800円と安い。本当に「アイデアのつくり方」をこんな安い価格で提供して大丈夫か、眉唾の内容ではないかとも思いながらも購入した。

 まずはじめに、上記小生の疑問に答える文面が書いてあった。すなわち、「アイデアの創生の公式は、説明は簡単至極だが、これを信用する人はほとんどいなく、また実際にこれを実行するとなると最も困難な種類の知能労働が必要なので、この公式を手に入れたといって、誰もがこれを使いこなすことはない」ということであった。だからこの公式を吹聴しても困ることにはならないそうだ。それほどのものなのか?

 前置きはこれくらいにして内容の抜粋を以下に紹介する。
1)アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもない。
2)要素の新しい組み合わせのためには、事物の関連性を見つけ出すことが必須である。
3)事物(事実)の間の関連性を探ろうとする「心の習性」がアイデア作成に最も重要であるが、それは、練磨することが可能である。
4)「心の習性」とは、以下の5段階を一定の順序で完遂させてゆくことである。
5)第一の段階は、資料を収集すること。当面の課題に関する特殊情報と一般的知識の絶え間ない集積。これは当面の仕事でもあり、一生の仕事でもある。それ故「言うは易く、行うは難し」である。
6)第二の段階は、収集した資料を徹底して咀嚼し、情報間の関係性について考え抜く。ドラッカーの言う「Think through」と通じるところがある。
7)第三の段階は、問題を一旦放棄し、忘れ、無意識の心にゆだねる(孵化させる)。無意識の世界では、休むことなくいろいろな考えが巡っている。
8)第四の段階は、アイデアが突然訪れる。(例えば入浴中に)。
9)第五の段階は、生まれたアイデアを現実の条件に適合するよう手を加え、成長させる。 赤子と同じで、手を掛けなければ、大きく育たない。アイデアが生まれて安心してはだめである。

 お解りのように、アイデアは真剣に頭を絞らないと出てこないものであり、又この絞り方の原理、方法を間違わずに行うことが重要であるということであった。

 信じて、徹底的に実行あるのみ! そうすれば、アイデアはあなたにひらめく!

参考文献;アイデアのつくり方 、ジェームス・W・ヤング (TBSブルタニカ)

 

秋風に思うこと

平成27年10月28日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
荒明 正春

 今年も特に休む日も無いままに気がつけば秋を迎えた。充実した毎日と云えば聞こえも良いがそれだけ色々とやらねばならないことがあった。そんな訳で相変わらず多くの文章を読む毎日。それは論理的な内容のものが殆どで科学、技術、訴訟、事故、事件など仕事の関係上 理系と文系の両方が要求される。

 時には、羽田から長崎へ歴史、文化を求めて短い旅に、真夏には涼しさを求めて湯の湖(日光)にドライブがてら出掛けて頭が懲り固まらないようにしている。質実剛健を忘れず研鑽を積むように努力しているつもりだが中々これが継続することは大変だと感じながらも時間は構わず過ぎて行く。何か気障な感じになったので最近特に感じている事を思いつくままに披露させて頂く。それは、物事を考えるためには知識も重要だが、物事を解決するためには知恵がものを云うと云う実感だ。

 複雑化した現代は、その多くが多すぎる情報の海の中から一つの真実を見分けなければ真の解決が図れない程、余りに雑音が多すぎることで、それは特許にしても事故にしても見極める心眼が要求されていると云う事実。その為には技術にしろ、何にしろ経験が必要で所謂、場数をどれだけ踏んできたかと云うことで、浅学非才の私は置いて、センターの皆さんはそれぞれの分野で豊富な経験と問題解決に立ち向かって来た人達。

 難しいのは、技術と知財とそして経営をどうシームレスに繋げて支援して行くかまた出来るかだと云うことで、これは正直中々至難の業あるいは技だと実感している毎日だ。格好を付けずに素直に直面する問題解決のために経験に基づいきそこから生まれる知恵と知識と判断力とをフルに冷静、沈着に発揮してクライエントの期待に応えられるような集団になれればとの思いがある。

 コンサルとは何かと云うことを業務を熟しながら常に自問自答しながら、気がついたことはそれを反映している日々。

 
 

『ブルーベリー作戦成功す』と先行技術調査

平成26年11月04日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
沢木 至

 『ブルーベリー作戦成功す』という小説をご存知だろうか? 最近発売になった「日本初の本格特許ミステリー小説」である。著者の池上敏也氏は、薬学部を卒業し、製薬企業に勤務した後、弁理士資格を取得し、20年間の勤務後に退職し、その後特許事務所を開設して20年間運営したという経歴のバリバリの理系特許専門家だ。

 この小説では、日本とドイツの製薬会社間での特許侵害紛争を発端に、特許を無効化する先行技術(プライヤー・アート)を入手するための『ブルーベリー作戦』を軸に話が進む。さらには企業秘密の売買といった動きも絡み、ミステリーの要素がふんだんに盛り込まれたエンターテインメントとなっている。知財のプロが書いた、特許紛争と営業秘密漏洩という知財の重要トピックを扱ったミステリーなので、是非とも読んでみて欲しい。

 さて、小説では先行技術をちょっと変わった方法で入手することになる(ここはミステリーの重要部分なので、詳細は実際に読んでみて欲しい)。でも現実にはそんな話はなかなかなくて、もっと地道で真っ当な方法で先行技術を見つけ出すことになるだろう。

 何度か特許無効化のための先行技術調査を行ったことがあるが、特許査定を勝ち取ったものを後から無効にできるような先行技術を、そうそう簡単に見つけることはできない。特に、特許文献については、データベースが充実しており、ある程度のスキルがあれば誰でもそれなりの結果が得られるため、審査の過程で見落としていた重要な証拠が後から見つかる可能性は低い(外国特許の中から見つかる可能性もあるが)。

 一方、非特許文献は、いくつかのデータベースがあるものの、特許情報のような分類はないし、テキスト検索も限られているため、逆に工夫の余地が大きく、調査する人の力量差が出やすい。そのため、特許庁や相手側が見つけていなかった重要な文献を見つけることができる可能性がある領域と言える。

 そんな調査を可能とするには、スキルだけでなく、対象技術を捉える視点や、突破口を見つけるセンスなども重要となってくる。また、最新のデジタルな調査手法にも対応できる一方で、時には昔ながらのアナログな調査手段(図書館で雑誌を片っ端からめくったり)も駆使するような、引き出しの多さも有効となる。知財経験だけでなく、技術者としての経験も含めて、多様で多彩な知見が武器となる奥の深い分野だと思う。

 我々には『ブルーベリー作戦』のように派手なプロジェクトは無理だけど、多様で多彩(多才)な人材が揃っている。地道で着実だけど他とは違う意外性のある調査をお望みの方は、是非一度ご相談いただけたら、きっとお役に立てると思う。

 

守秘義務について

平成26年10月16日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
加納 照彦
 私が経験したことをお知らせ致します。
 ある日、私宛に全く知らないアメリカの企業からの英語のメールが届きました。その内容は次の通りのものでした。

  「我々は、全世界で技術コンサルタントの仕事をしている。貴殿も技術士として働いておられると理解しているが、今回貴殿に一つの仕事をお願いしたい。ついては、貴殿がプロフェッシヨナルエンジニアとしての自覚がどの程度のものであるかを確認したい。資料を送るので、回答を送って欲しい。」と言うことでした。

 “OK”の返事を送った所、資料が送られて来ました。様々なケースの守秘義務に関する事例が表示され、“YES“ or “NO”の答えを要求していました。

 返事を出したら、「貴方は、当社の守秘義務に関する試験に合格しました。貴方をわが社のコンサルタントとして採用します。ついては、添付してある質問事項に対して返事を用意して置いて下さい。それが用意されたら知らせて頂きたい。その後貴殿の所へ電話が行くので各質問に対して20分程度の返事をして下さい。電話での質問に対する回答が終わったら確認後、1件につき○○円の報酬を送ります。」というメールが送られて来ました。

 暫くして質問事項が送られて来ました。その内容を見て驚きました。それらは、私が以前勤めていた会社の研究所にいた時に特許を取り、得意先へ提供した技術の特許請求項に入れてなかった数項の重要なノウハウの中に含まれていた事項 でした。

 私は返事を送りませんでした。催促のメールが送られて来ました。私は無視しました。それから数か月後、東洋の或る国の大手メーカーの名前で、次の様なメッセージがメールで送られて来ました。

 「お前は我々の要求を無視した。今に見て居ろ、我々はこの製品の世界一のメーカーになってやる。」それは、アメリカの企業ではありませんでした。東洋に所在する大企業でした。最後に送られて来たメールを含め、信じられない事件でした。尤もこの特許は既に期限切れとなっていたので、回答をしたとしても法的には問題は無かったかも知れません。然し、私が守秘義務を忘れて唯唯諾諾とノウハウを送っていたら、今頃日本のメーカーはどうなっていたことでしょうか?

 このような形で「日本の知財」を持って行こうとする外国企業もある。という1例をご紹介致しました。
 

特許電子図書館の活用事例からの一考察

平成26年04月06日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
理事 馬緤 宏 

 特許電子図書館(IPDL)は、特許等の出願前には必ずと言っていい程、新規性確認のために、類似の前例有無の調査(先行技術調査)に利用されている。ここには膨大な過去のデータが蓄積されており、出願前の調査だけに用いるのは勿体ないとかねがね思っていたが、最近、これを知的な遊びに用いている方に出会った。

 それは、IPDLの中で公開テキスト検索を用いてあるキーワードをINPUTし、出てきた特許、実用新案の文面から関心のある技術を選び、再度検索して、次々と繰り返し拡大して関連情報を読み取り、全く予想してなかった情報を得て驚きと満足を得るものであった。特許出願前の新規性調査のような仕事目的ではなく、知的好奇心を満足させる一種の遊び目的である点が特徴である。多忙な人向きではないが、技術分野のすそ野拡大には最適の方法と思われる。IPDLでは、ある技術のキーワードを入れると、過去の特許情報のデータベースの中から該当する文献を一瞬のうちに選出可能だから、この話を聞いた時には、単なる遊びに使うのは勿体ないと感じた。

 最近、筆者がIPDLを活用した事例は次の2例である。一つは、最近、初心者・中級者向けの機械設計の本を出版したが、この中で、設計のアイデア発掘の方法として、失敗事例分析と過去の先人の発明事例を集め、ここからヒントを得て有効な案を捻出する方法を解説した。もう一つは、最近の有名な展示会で、ある会社が特許番号を表示して新技術を説明しているのを聞いた。帰宅後、念のためにIPDLで調査して詳細まで理解できた。更に、その会社の特許状況を調査したら、新たに7件の特許が発見された。翌日、他にも用件があったので、その2日目の展示会に行き、昨日の会社の担当者に調査結果を話したら、驚いていると同時に、当方への信頼感が増した様子であり、その後の活動に役立った。

 ここではIPDLの活用方法の例を述べたが、知財のツールは他にも多く存在する。それらを少し違った見方で活用して、何かの創作活動、経営、技術などの活動や支援の範囲を拡大したいと願うと当時に、特殊な技術を持つ仲間が増えることを期待したい。

 

私の知財に関する旬の時期、そして今は

平成26年01月22日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
監事 新家 達弥

   60歳で定年退職する時に、知財部門から入社以来関与した特許の一覧表のリストを贈られた。筆頭執筆したものが約35件、連名執筆したものが約100件であった。一覧表をみれば、研究開発に没頭していた時期に筆頭執筆が多く、主任技師になってからは連名として関与したものが多くなっているのは一目瞭然である。開発担当の時代は、特許のネタはいくらでもあったが、特許執筆のために研究開発の時間が取られるのを嫌い、最低限のノルマ件数しか出願しないことが多かった。しかしグループの特許出願件数が未達とわかる期末には、上長から頼まれ、一週間程度で書き上げることもあった。まさにこの時が私にとって特許創生の旬の時期で、兎に角自分のアイデアをこれでもかと、なんでも請求項に書き込んだものであった。

 しかし、グループリーダとなると、本当に強いクレームは何か?競合会社が困るクレームは何処か?など、部下の請求項の内容や書き方の方に関心が移り、担当者のアイデアを褒めながらも、弱点や不足内容を補強したり、修正させたりすることが多くなった。そして本当に会社に役立つ、強い特許の出願を執筆しているのは筆頭発明者でなく自分であると自讃?したりした。まさにこの時期は、特許内容の強化の旬の時期であったように思う。

 そして、今、技術士として独立した立場で、上記経験を活かした活動をするとして、何を旬とする時期になるであろうかと自問する。

 直接の担当者でない立場になったのであるから、知財を客観的に評価できる旬の時期か、知財の適切な商品化を支援する旬の時期か、そしてそのための武器を錆びさせることなく磨き続けて、グローバルな競争の時代に生き残ろうとしている顧客と共栄して行く時期にするか? そのため日々悪戦苦闘している時期である。
 

知財とセレンディピティ

平成25年12月17日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
広報担当理事 福井 寛

 「知財」とかけて何と解く、「泥船の上の狸」と解く・・・・その心は?!


 「価値、価値と言い始めると危ない!」カチカチ山ではカチカチという音を聞いて狸の没落が始まった。

 知財の価値とは何だろう。知財の価値というのは難しい。はっきりと価値が分かるものは「この知財の価値は・・・」などと説明しなくても良いものが多い。そもそも知財の価値は単独では決まらない。ビジネスモデルに組み込まれて初めて価値が出る。その知財に適したビジネスモデルを持っていない組織ではその知財の価値はほとんど無いに等しい。自分でビジネスモデルを作るか、それに合うビジネスモデルを持っているところに使ってもらうかということになる。

 話は変わるが、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値あるものを見つけることがある。この能力・才能をセレンディピティと呼ぶが、何かを発見したという「現象」ではなく、何かを発見する「能力」を指す。

 世界で有名な発明・発見はこのセレンディピティが関係している。ペニシリン、エックス線写真、テフロン、電子レンジなどは偶然の発見を実用化したものである。セレンディピティの段階としては、①偶然その現象に出くわす、②常識からはずれたその兆侯に興味を示す、③常識を疑いそこに新たな仮説を立てる、④その兆侯を徹底的に分析し新たな仮説を裏付ける、である。自然は人間より偉大である。しっかりと自然の観察を行えば素晴らしい法則に遭遇するので、それを基本に仮説を作り応用することによって新しい価値が生まれるということであろう。

 私は長く化粧品業界にいたが、化粧品は雑学の集合体で、様々な領域の情報を組み合わせて新しい価値を生み出している。一般的には「選択と集中」がもてはやされているが、私の場合は「拡散と結合」で多様性を目指している。技術や特許を違う領域のビジネスモデルに組み込んで新しい価値を創り出すためのお役に立てればと思う。

 

あれから10年

平成25年10月31日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
副代表理事 黒田雄一

 2012年末の安倍政権の誕生以来、日本全体がデフレ脱却に向けて(進み方の早い遅いはあっても)ベクトルを揃えてきたように感じられる。その要は成長戦略であり、これを支える大きな柱の一つが知財政策であろう。ところが2003年に「知的財産基本法」、「知的財産戦略大綱」が相次いで制定され、「知財立国」へ華々しく踏み出して10年、この間に行政や司法の制度や仕組みの刷新が進んだものの、肝心の国際競争力の面では、多くの産業分野で右肩下がり状況が続いてきた。


 この当時のいわゆる「知財ブーム」に関連して、東大名誉教授の甘利俊一先生が2004年の電子情報通信学会の会長就任挨拶において警鐘を鳴らしたことが思い出される。その趣旨は、科学技術から生まれたはずの知的所有権が科学や技術でなく法律の枠で議論され、知的好奇心がその源泉であるはずの科学と技術がもっぱら法律的係争を通じた財テクの手段として扱われがちであることへの憂慮であったと記憶する。また、そのような争いが学術の創造性とは関係なく法的技術に長けた‘ずる賢いもの’の勝利となりがちな点も指摘されていた。

 「ずる賢いもの」の典型は、米国辺りで話題になり始めていたパテントトロールであろう。しかしそこまで行かずとも、知財を科学技術という母胎から引きはがして(あるいは目をふさいで)、法律論、用語論、権利化テクニック論だけの世界に取り込もうとする「知財専門家」もまた少なくないように感じるのは、筆者だけだろうか。

 新しい技術的着想を、権利化テクニックを駆使して破綻なく説明すれば、特許はとれる。しかしその着想を形にし、さらに事業化するには、科学的知識、ものづくり現場の技術、そして販売、経営面の知恵(それに資金)を注ぎ込まねばならない。表面的「知財ブーム」とは一線を画するわが「技術知財経営支援センター」の活動が、真の「知財立国」に些かなりとも貢献して行けることを、切に願ってやまない。

 

私の体験的MOTコンサル論(その1)

平成25年9月30日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
副代表理事 佐々木久美(ササキ ヒサミ)
 
 2008年春、私は化学技術者として39年間勤務した大手日用品メーカーを定年退職した。約30年間の研究職時代には20品種近い新製品(内容物)を開発すると共に多数の特許出願を行った。その後、子会社の事業企画と開発営業を経験した後、最後は本社の知財部に呼び戻されて、後輩技術者への教育を兼ねた出願支援を担当した。決して順調な会社人生ではなかったものの、あらためて振り返ると、これらの実務経験がMOTコンサルタントとしての佐々木技術士を形成している土台になっており、「今の私はこれまでに出会った人々と出来事の全ての賜物である」を痛感している。特に、研究職の後、突然エンジニアリング系の子会社へ左遷された当時は失望感が大きかったものの、事業企画、マーケティング、開発営業という研究職では体験できない極めて貴重な実務を通じて勉強させて戴いた。

 独立後も若干の紆余曲折はあったものの、開発系の技術コンサルタントとして常にクライアント企業を抱えると共に、中小機構「農工大・多摩小金井ベンチャーポート」という中小ベンチャー企業の支援機関において非常勤インキュベーション・マネージャー(以下、IMと略記)として中小企業支援の現場で、MOTコンサルを勉強させて戴いている。

 これに、昨春からはMOT-IPとしての仕事と補助金関連業務も入ってきているのが現状であり、コンサルとして充実しつつある。IMとして企業支援を日常で体験できる貴重な立場にいることもあり、MOT-IPの今後の方向性を見据えつつ、私は「今後のMOTコンサルティングのあるべき姿」を常に模索している。例えば、士業コンサルタントの多くは役割分担型で企業業務の一部分を受け持つスペシャリストスタイルが主流であろう。しかし、多くの中小企業からMOTコンサルティングのレパートリーとして、単なる技術・知財面での支援のみならず、マーケティング戦略を踏まえた技術開発テーマからターゲット顧客の設定と販路開拓に亘る総合的MOTコンサルが求められてきていることを痛感する。しかし、周囲の士業者を見渡しても、技術士をはじめ現在これをこなせるMOTコンサルタントは希少であろう。

 最近拝聴したセミナー「ネジザウルスの開発から得られた秘訣」の中で、(株)エンジニア・高崎社長がヒット商品を生み出す4つの秘訣の中で、特にマーケティングとデザインの重要性を説かれていましたが、私も全く同感である。つい取りとめもなく書き連ねてしまいましたが、本テーマは永遠の課題です。今後も掲載場所を変えて議論を継続して参る所存です。ついては諸兄からもご意見を頂戴致したく。
 

私の体験的MOTコンサル論(その1)

平成25年8月31日
(文責)㈳技術知財経営支援センター
代表理事 秋葉恵一郎
   最近、MOT-IPのホームページとは別に自分の事務所のホームページを立ち上げた。アドレスは、http://www.mot-ip.com/akiba/01home.htmlである。「プロフィール欄」を見ると、改めて知財関係の業務経歴が長いと感じるが、これには理由がある。

 入社当初は農薬事業部研究部に籍を置いていたが、上司が研究には向かないと判断したようで、私は特許部、農薬事業部開発部、製造部と技術系として広いキャリアを積むように転勤した。転勤すると社内での知己が増え、電話一本で用事を頼める間柄ができ、仕事をスムーズに進められるようになる。私はこの先もこの流れに乗って農薬事業部海外開発部、本社技術部等に籍を置いて会社生活を送るのだと思っていた。

 ところが、仕事にも原因と結果が結び付いているようで、仕事を司る神様は、所々に『ターニングポイント』を置いている。私の場合は、特許部で携わった農業用ピレスロイドの米国特許出願を担当したことが“原因”になり、取得した特許権を行使して独占実施権者であるShell USAと共同で米国特許訴訟を提起することになった。これが“結果”である。日本の会社では初めて原告として米国で特許訴訟をすることになった。米国で我社の大型農薬の独占を守り、特許権の無効を防ぐためだ。私は知財部で6年半“専従”でこのスーパーヘビー級の特許訴訟を闘った。結果は、自社有利の和解で終了することができた。

 それから私の会社人生は変わり、知財に深く係わることになった。訴訟が起こる前は「縁の下の部門」だった特許部が、新聞紙上では“特許部から知財部”へと高級なイメージの名前に変わり、かつ記事として取り上げられることが増えた。会社内では職務発明への出願補償・登録補償・実施補償規定を作ることになり、自社知財組織を強化する役目を担い、日本の特許訴訟にも携わり、海外調査も数多く行った。それらの全てが今の自分を作っている。

 会社での業務経験にJST(科学技術振興機構)、IPCC((財)工業所有権協力センター)、志賀国際特許事務所調査部並びに(国)東京工業大学で経験したキャリアを加えてMOT-IPの業務に励んで行きたいと思っている。

 私は“仕事の種子をまきます”、そしてこれからMOT-IPの趣旨に賛同して参加して下さる若い会員に“大きく育った仕事を刈り取ってもらいたい”と思っています。
 

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